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その不気味な笑みに私は小さく息を呑んだ。
この男は人に痛みを与えて悦びを得る異質な人種なのかもしれない。
背筋に嫌な汗が流れる……。
「ねぇ、逃げないの?俺が怖いなら早く逃げなよ♪ほら、キミの直ぐ横に外へ出られる扉があるよ?」
「………え……?」
突拍子もない事を言う彼に動揺し、けれど反感を買わないように恐る恐る首を傾げた。
すると紫の髪の男は私の肩から手を放すと、顎をしゃくって左側を指す。
指された方を見ると彼の言う通り、私の直ぐ横には校舎の裏庭へ出られる勝手口みたいな扉があった。
その扉は小さな小窓が付いているだけで壁と同色な為、周りと同化していて気がつかなかったようだ。
でも彼の言っている意味がわからなくて戸惑ってしまう。
この男は何がしたいのだろう?
恐怖から動かずそのままでいると、紫の髪の男は忌々しそうにチッと舌打ちをした。
その音に私の肩がビクッと跳ね上がる。
と、その時、背後からこの場に不釣り合いな女の子の声が聞こえた。
「あら?こんな薄暗い所で何をしているのかしら?」
その声に皆が反応し、振り返るとそこには驚くほど黒髪が綺麗な美少女が、静かに微笑みを浮かべて立っていた。
途端に私を取り囲む男たちがザワザワと騒ぎ出す。
「げっ!ヤベーよ、鷲塚だ……」
「なんで鷲塚がこんなトコにいんだよッ!? 」
そんな声が私の耳に聞こえる。
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