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彼らは男だし数も圧倒的に多い。
負ける要素など到底見当たらないと思えるのに何故か皆、華奢な彼女に怯えているように感じた。
なのに少し離れた位置に立つ美少女は素知らぬ顔で、尚もニコニコと微笑みながらこちらを見ている。
「ねぇ、亜也斗くん。こんなトコで何してるの?確か貴方の大好きな“ウサギ狩り”は学園内では禁止された筈よね?」
笑顔のまま紫の髪の男を真っ直ぐに見据える美少女、もとい“鷲塚”と呼ばれた私と同い年くらいの女の子。
彼女は大勢の男たちを前にしても堂々としていて、怯む様子は一切見られない。
「さて、何の事かな?麗しき鷲塚家のご令嬢♪」
「フフ、誤魔化しても無駄よ♪校舎内に貴方の配下がHRも出ずにうろうろ徘徊してるからバレバレだもの☆」
「ただサボってるだけだろう?まさか俺にいちいち注意して回れって言う気じゃないだろうね?」
彼女が核心を突いても“亜也斗”という紫の髪の男は、終始へらへらと嫌な笑みを浮かべてその場を茶化す。
彼は説明する気がなさそうだ。
鷲塚という女の子も深く追求する気はないようで、わざとらしく溜息を吐く。
「ま、いいわ。今回は見逃してあげるからさっさと消えなさッ―――…」
「やっぱり貴様らか、チィを攫ったのは……」
突如反対側の廊下から彼女の言葉に被せるように男の人の声が響いた。
弾かれたように皆が一斉にそちらへ振り向くと、そこには静かな怒りを滲ませた煌騎が立っている。
そして彼の後ろには息を切らせた和之さんと朔夜さんの姿もあった。
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