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彼の怪我は素人の目から見てもあまりに酷い。
まるで集団暴行に合ったようだった。
虎子ちゃんを庇いながらではかなりの苦戦を強いられたのだろう。
一刻も早く彼をお医者さまに見せてあげたかった。
なのに私の目の前に立つ亜也斗は二人のやり取りを見て鼻で笑い、何故かその場でパチパチと手を叩き出す。
「なるほど面白い余興だね、楽しかったよ♪でもそろそろ飽きてきたかな☆」
「―――なんだと、テメェ!ふざけんなよッ!!」
直ぐさま流星くんが憤りも露に声を荒げるが、虎汰を支えている為に前へ出ることが叶わない。
悔しそうに歯軋りする音がこちらまで聞こえてきそうだ。
彼の心情を察した和之さんは、けれど流星くんを宥めるよう肩に手を置いてポンポンと叩く。
「……流星、気持ちはわかるが今は耐えろ」
そう言った彼は流星くんよりも歯痒そうな面持ちをしていた。
その様子で自分がこちらにいる所為で、彼らは下手に手出しができないのだと悟る。
―――私はどこまでお荷物になるのだろう……。
悔しさのあまり下唇をぎゅっと噛んでいると、ふと煌騎と目が合った。
彼は私に優しく微笑むと小さく頷いてくれる。
なんだか“心配ない、直ぐに助ける”と言われているような気がした。
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