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虎汰も釣られて振り向くと、息を呑んで言葉を失う。
緊張状態が長く続いた為に体力の限界に達し、私が息も絶え絶えに煌騎の腕の中で弱っていたからだ。
「チィ、これを口に当てろ」
煌騎はそう言って私をその場に横たわらせると、制服のポケットから携帯用のビニール袋を取り出す。
それを私の背中を支えながら、器用に片手で膨らませてから優しく口に当ててくれた。
「………はぁはぁ、…はっ……はぁ…」
己の吐いた息を吸って徐々に呼吸が楽になっていく。
先ほどの恐怖も煌騎の腕の中に包まれていると薄らいでくるようだった。
その間皆は言葉を発さず、周りを取り囲んで私の呼吸が安定するのを温かく見守ってくれる。
「……チィ、大丈夫か?」
暫くして少し席を離れていた和之さんが、落ち着きを取り戻した私の前に冷たい紙パックのジュースを差し出してくれた。
見ればパッケージには“チョコ味”と書かれていて、身体は疲労困憊で疲れていたけれど途端に元気が出る。
昨日のホットチョコを飲んだ時の幸福感を思い出したのだ。
「わぁ!“ちょこ味”だぁっ♪ありがと、和之さん☆」
「ん?あ…あぁ、どうぞ♪」
お礼の言葉に何故か彼は苦笑を浮かべたが、直ぐに何でもないように振る舞う。
どうやら私の“ちょこ”という言葉のニュアンスが微妙に違ったらしい。
それに気付かなかった私はニコニコと満面の笑みでジュースを受け取った。
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