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だけど鷲塚さんは嫌味な笑みを浮かべると、今度は私に標的を定めたのかこちらに視線を向ける。
「ねぇ、煌騎ったら酷いと思わない?人前だとホント未来の花嫁に冷たいんだから、失礼しちゃう☆」
「…………愛音っ、やめろと言っている」
「やだ、怖~い!本当のコト言ってるだけなのにどうしてそんなに怒るのぉ?」
キャッキャと鈴の音のように笑う彼女に煌騎は眉間の皺を更に濃くした。
彼の初めて怒りを露にした様を目の当たりにして息を呑む。
私には優しかった煌騎が女の子に、しかも自分の婚約者だと言っている彼女に本気で怒っているようだ。
驚きのあまり呆然としていると、和之さんが険悪な雰囲気漂う二人の間に躊躇いもなく入ってきた。
「愛音ちゃん、悪いんだけど絡むのはまた今度にしてくれる?見ての通り今はキミの相手をしてる余裕ないんだ」
彼の表情は穏やかだけど目の奥は笑っていない。
静かなる怒りを湛えていた。
なのに鷲塚さんは気にした風もなく、肩に掛かった漆黒の髪をサラリと払う。
「あら、チームの“姫”は私よ?その私よりもその子を優先するって言うの?」
「まさかっ!でもキミには既に神崎という本職の護衛が四六時中ついてる。だったら俺らは必要ないと思うけど?」
お互いに笑みを浮かべたまま一歩も退かず、静かに牽制し合う二人。
その間には微かに火花が散っているようにも見えた。
もしかしたらこの二人は普段からこうして仲が悪いのだろうか……?
そう思える光景だった。
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