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責任感の強い彼女の事だから、今回の件で自責の念に駆られているのだろう。
全ては私の過ちが引き起こした事なのに本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「……あいつなら大丈夫だ。そんなにヤワじゃない」
心痛な面持ちで彼女を見ていると、煌騎が優しく声を掛けてくれた。
私の視線を追って彼も虎子ちゃんの異変に気づいたようだ。
目が合うと力強く頷いてくれる。
それから私の不安を取り除こうとするようにオデコ同士をくっつけ、グリグリして“後で俺もフォローしておく”と言ってくれた。
本当は直接謝りたかったけど、何に置いても経験不足な私に励まされるよりはいいのかもしれないと思い、素直に頷き返す。
「煌騎、健吾さんには連絡を入れて今日はこのまま帰ると伝えたがどうする?」
不意に和之さんがスマホ片手に尋ねてくる。
彼の“どうする?”とは“このまま帰るのか?”という意味だろう。
さすが根回しの達人である和之はこんな所でも仕事が早かった。
いや、こんな時だからこそ迅速に動くのかもしれない。
万が一にも亜也斗たちが援軍を連れて戻ってくるかもしれないからだ。
煌騎は一度和之さんから視線を離すと、ゆっくり私に顔を向ける。
「なぁ、チィ。もう少しだけ俺に付き合ってくれないか?」
「……えッ!?、」
彼の突然の申し出に私は戸惑ってしまう。
正直、怖い思いをしたこの学園にはあまり長くはいたくなかった。
けれど煌騎は意味ありげにニッと口端を上げる。
「お前にいいもん見せてやる♪」
「―――いいものッ?」
その言葉に心惹かれる私……。
パァッと顔を綻ばせ、直ぐさま同意の意味でコクコクと頷いていた。
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