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ポケットからあるものを取り出して彼は無造作にそれを差し出した。
大きな手のひらに乗っかった小さな物体……。
よく見ると茶色い包装紙に包まれたソレの表面には、カタカナで『チョコ』と書かれていた。
「………ちょ…こ?」
「そ、やる!コレで機嫌直せ」
“俺の秘蔵チョコだぞ”と目の前に突き出された『チョコ』を、私はマジマジと見つめる。
そのまま手渡されてニギニギしてみるが、感触は想像に反して固かった。
「……どうした、チィ。お前の好きなチョコだぞ?」
反応を返さない私に疑問を感じた流星くんが顔を覗き込む。
けど放心状態の私はやっぱり手のひらにある『チョコ』を呆然と見ていた。
「フッ……チョコには飲み物や固形にして食べるものもあるんだぞ?試しに食べてみればいい」
私の戸惑いを逸早く悟った煌騎が優しく教えてくれる。
そして空いている方の手で私の手のひらから『チョコ』を掬い取ると、きれいな包装紙を手と口を使って器用に開いてくれた。
途端に『チョコ』特有の甘い香りが辺り一面に拡がる。
「あ!この匂い…ちょこだ」
「……だろ?ホラ、口開けろ」
煌騎に薦められるまま、私は躊躇いがちに口を開けてみる。
すると彼の手にあったちょこはポイッと丸ごと口の中に放り込まれた。
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