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はむはむすると甘くて優しい味が私の口の中いっぱいに拡がる。
蕩けそうな味わいに今までの疲労感が一気に吹き飛んで、すっごく幸せな気持ちになれた。
頬っぺたに両手を当ててふにゃあって顔が緩むのを必死に抑えたけどムリ……。
こんなに美味しい食べ物は今まで食べたことがないッ!!
私は固形の『チョコ』を心行くまで堪能した。
「……チィ、旨いか?」
暖かく見守るような眼差しで煌騎が尋ねる。
私は満面の笑みでコクコク頷いて固形の『チョコ』も気に入ったことを伝えた。
すると彼は自分の事のように喜んでくれて頭を撫で撫でしてくれる。
それが気持ち良くてトロンと瞳を閉じた。
「フフ……丁度いいからそのまま目を閉じてろ」
「はーい!…クスクス♪」
最後にポンポンと軽く叩いて大好きな煌騎の手は去ってしまったけど、口の中にはまだ幸せな味が残っているから大丈夫。
それに今から何が起こるのか楽しみで仕方がなかった。
自然と笑みが零れる。
煌騎は私が固く目を瞑っているのを確認するとゆっくり歩き出す。
「………ぁ……」
扉らしき境目をくぐった瞬間、私の頬を優しい風がふわりとくすぐった。
どうやら私たちは外へと出たらしい……。
―――もしかして屋上……カナ?
目を開けるのが待ち遠しくて瞑ったままキョロキョロ辺りを窺っていると、煌騎に“もうちょっとだから待て”と笑われてしまった。
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