学校は危険がいっぱい

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. そわそわしながら待っていると、鉄の階段を軽快に上っている感覚がした。 屋上の更に上を目指しているようだ。 煌騎は階段を昇りきるとホッと息を吐き、辺りを窺いながら数歩歩いて立ち止まった。 「チィ、もう目を開けていいぞ」 「……え…あ、うん!」 やっとお許しが出て私はドキドキしながらゆっくりと瞼を開ける。 無意識のうちに彼にしがみついていた体勢そのままに、まず瞳に飛び込んできたのは驚くほど澄み渡った青い空だった。 「…………ぁ………」 まるで身体が宙(ソラ)に浮いているようだと思った。 長年、古雑誌でしか見る事が叶わなかった青い空が今、私の目の前に……ある。 当然だけど手を差し伸べてみても天には届かなかった。 代わりに大気の流れを肌で感じて、瞳からは自然と涙がポロポロ溢れ出る。 「………外の世界はっ、…こんなにも広かったんだね……っ」 「あぁ、……お前は長い間この世界を知らずに生きてきた。なのに俺は事を急ぐあまり怖い思いをさせてしまった。悪かったな」 「―――えッ!?、」 突然の彼の謝罪に私は驚く。 窺うように煌騎を見れば、彼は揺るぎない眼差しで真っ直ぐに前を見つめていて、そのまま言葉を続けた。 「だが俺はチィに早くこの学園に溶け込んで貰いたかったんだ。きっとこの学園でお前は多くの事を学ぶだろう。学業だけでなくいろんなことを……、それはいずれ生きていく糧となる」 だから和之さんたちが止めるのも聞かず、私の編入を急がせたのだと彼は語った。 最後にぎゅっと私を抱く腕に力を込める。 その瞳は変わらず前を向いていたが、彼の優しい気遣いが痛いほどに伝わった。 .
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