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「ハァ、ハァ……ハァ……」
もう息が上がって上手く呼吸ができない。
( 苦しい…よぉ…… )
けれどもっともっと走らなきゃと焦燥感に駆られ、私の脚は前に進むことを止めない。
あれからどれくらい走り続けているだろう……。
真夜中の不慣れな森林を私はただ一人、靴も履かずに駆け抜けていた。
感覚としてはあの屋敷を抜け出してからもうかなりの時間が経過している。
あの人たちはそろそろ屋敷内の異変に気がついただろうか……?
だとしたら尚更、今ここで脚を止める訳にはいかなかった。
今度捕まれば私は確実に殺されてしまう。
そんなことが容易に想像できてブルリと身を震わせる。
でもその思考を無理やり頭を振って外に追いやった。
己の両肩を抱きしめて負けそうになる気持ちを奮い立たせ、疲労が溜まって重くなり始めた脚を何とか前へと進める。
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