1036人が本棚に入れています
本棚に追加
.
だが言い返しても口で彼に勝てる気がしないのも事実……。
なのでこれ以上は不快な気分になりたくなくて、敢えて何も言わず顔を窓の方へ向けた。
と、窓の外に見たくないものを見つけてしまって衝撃を受ける。
先ほどいた棟の屋上に煌騎とあの女の姿があったのだ。
彼処は白鷲幹部のたまり場で有名な為に一般の生徒はおろか、学園の教諭たちも立ち入る事を憚る場所となっている。
この私ですらまだ入った事がない彼らの聖域に、たった数日前に拾ったという“ゴミ”が土足で踏み躙っているなんて……!!
あまりの腹立たしさに親指の爪を強く噛んでその光景を睨んでいると、神埼が私の視線の先に気づき感心したように息を吐く。
「ホゥ……大人しそうな顔をしてやる時はやるな。さすがはあいつのっ―――…」
「―――神埼ッ!! それ以上口にしたら許さないわよっ!!」
軽はずみに史上最大級の禁忌を口にしそうになった彼を私は慌てて止める。
運命共同体の私たちはそれが露呈すれば文字通り身の破滅だ。
強めに睨むと今度は効き目があったのか、珍しく彼は肩を落として申し訳ないという顔をする。
「悪い、つい口がスベった……」
「気をつけてよね!私はあなたと自滅する気なんて更々ないんだからッ!!」
深い溜息を吐きながらもう一度、二人のいる屋上を見やる。
それにしても、憎い!憎い!憎い !!
私はあの女が殺したいほどに憎いッ!!
あの女はすべてを持っているクセに私から大切な煌騎を奪った。
だから10年前、人の力を借りて私もすべてを奪ってやった!!
邪魔者を消してやっと心から安堵していたのに……。
また私の目の前に現れてあの女は平穏を乱そうとする。
.
最初のコメントを投稿しよう!