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おそらく蛇黒№2の吉良 悠真の事が気に掛かっているのだろう。
先ほどあの場に駆けつけて亜也斗を戒めた青い髪の男は彼だ。
吉良は亜也斗の腹心的存在だが、それ以前に常磐家に代々仕える執事の家系らしい。
常磐家といえば全国にその名を轟かせる大手流通会社を創設した大財閥だ。
亜也斗はその現総取締役会長の直系の孫に当たる。
故に学園内で問題を起こすわけにはいかず、彼をお目付け役として傍に置いていた。
けれどそれは取り立てて問題視する事ではない気がする。
何故なら吉良は学園の外なら亜也斗の非道な行いをすべて黙認し、闇で財閥の力を借り揉み消しているからだ。
だがそれを伝えても神埼は納得しなかった。
「吉良も気になるが問題は常磐の方だ。あいつは何かにつけて暴走しがちだからな、しっかり奴の手綱を握れる者が必要だ」
そう渋い顔をしながら言う。
私もそれは気に掛けていただけに反論できなかった。
言葉を詰まらせると神埼は軽く息を吐く。
「吉良を懐柔しろ、先ずはそれからだ」
「えっ、そんなの無理よ!だって私、あの男に嫌われてるものっ!!」
私は即座に首を横に振った。
吉良は裏で汚い仕事をしてるクセに変に潔癖で、ウチの家業をそれはもう毛嫌いしているのだ。
ムリムリムリと連呼するも、神埼は不機嫌に眉根の皺を濃くするだけだった。
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