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あれから屋上でマッタリと過ごした私たちは、下校のチャイムと共に校舎を後にした。
その間煌騎は自分で歩けるという私の主張を無視し、ずっと片手で抱っこし続けてくれてご満悦の様子。
昇降口に辿り着くと案の定、外は今朝と同じ光景が広がっていて多くのギャラリーに大ブーイングされた。
でも背の高い和之さんらが周りを囲ってくれたお陰で、ほんの少しだけど恐怖が和らいだ。
表には既に煌騎の車が横付けにされていて、後部ドアの前で専属運転手の山河さんが待機していた。
彼はいつからここで待っていたのだろう……?
そんな事を考えてる間に煌騎は私ごと車内に乗車し、和之さんと朔夜さん、流星くんの順番で皆も車に乗り込む。
「煌騎さま、お帰りはいつもの場所で構いませんか?」
全員の乗車を確認すると山河さんは運転席に乗り込み、バックミラー越しに後部へ視線を寄越した。
初老の彼は物腰が柔らかで、鏡越しに目が合うと優しく微笑んで目尻の小皺を深くし、私に安心感を与えてくれる。
その様子を見て煌騎は軽く笑むと私の頭を撫でながら山河さんに向かって頷いた。
すると車は静かに動き出す。
たくさんいたギャラリーも進行の邪魔にならないよう退き、瞬く間に一本の通り道が出来上がる。
そこを真っ白な高級車両のリムジンが滑るように走り抜けた。
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