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「あ、煌騎さんにチィさん!おかえンなさいッ!!」
倉庫の扉を潜れば白鷲の若い子たちから代わる代わる声を掛けられた。
強面の顔と勢いに圧されて萎縮気味にペコペコと頭を下げるが、今いる子たちは殆んどが私より年下だというから驚きだ。
「おかえりなさいッス♪」
「あ、はい、ただいま…デス」
通りすがりに声を掛けられる度に小さな声でしどろもどろ挨拶を返すと、皆は嬉しそうにニカッと笑ってから持ち場へ戻っていく。
ここを守る為に形成された彼らは、腕に自信のある強者ばかりが集められた選りすぐりの戦闘要員なんだとか……。
普段学校には交代で行くようになっているらしく、倉庫を空ける事はまずないのだそうだ。
「チィ、腹減ってないか?夕食までまだ時間があるから和之に何かおやつでも作って貰うか?」
「おやつ……?」
鉄晒しの階段を昇りながら煌騎が腕に抱く私に尋ねてくれる。
でもそんな習慣は今までなかったので一瞬ピンとこなくて小首を傾げてしまった。
「だったらパンケーキでも作ろうか?アレなら簡単だし夕食までは腹も保つよ」
「―――パンケーキッ!?」
和之さんの提案に私の耳はピクリと反応する。
直ぐさま煌騎の首に抱きつくと後ろにいる彼に期待の眼差しを向けた。
「ねぇ、和之さん♪パンケーキって白くてふわふわしたのと、小っちゃくて丸くて赤いのもついてる?」
「ん?…あ、もしかしてホイップクリームとさくらんぼの事かな?なら、ちょうど昨日チィ用に買い足したところだからご要望に応えられると思うよ♪」
興奮気味に尋ねると和之さんは快く快諾してくれる。
途端に私は嬉しくなって煌騎の首に更にしがみ付いた。
「煌騎ぃ!私パンケーキ食べるの初めてだよぉ♪」
もう私は嬉しくて仕方がない。
昔一度だけ雑誌に載ってたのを見たことがあるのだけど、それがスッゴく美味しそうだったのだ。
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