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流星くんは一瞬マズイという顔をして掌で口許を覆ったが、私はしっかりとそれを聞いてしまっていた。
世界は広いと知ったばかりだけど、この世に甘いものが苦手な人もいたなんてカルチャーショックだ……。
驚きにパチパチと瞬きを繰り返していると、煌騎がそっと私の頭を撫でてくれた。
「男は大抵が甘いものが苦手になる。だから気にするな」
「だ、だよな!俺もガキの頃は甘いモン喰ってたけど、成長するにつれて身体が受け付けなくなったし……」
妙に焦りながら流星くんがうんうんと頷く。
だけどそれに異を唱えたそうにする朔夜さんに目が止まり、また私は首を傾げる羽目となった。
「じゃあ、甘いものが好きな朔夜さんはおん―――…」
「あぁっ、チィ!一緒にパンケーキ作ろっか?二人で作業すると楽しいよ♪」
不穏な空気を察したのか、私が『~女の子なの?』と続けようとしたら和之さんに慌てて言葉を遮られた。
でも根が単純なのでその提案に直ぐさま心奪われる。
「え、お手伝いしていいのッ!? うん!するする~♪」
そう答えると彼は心底ホッとしたような顔をした。
その隣で朔夜さんは頬を引き攣らせていたけど、私の頭の中はもうパンケーキの事でいっぱいだ。
堪えるようにゲラゲラ笑う流星くんのお腹に彼の鉄拳がめり込んだのにも気づかず、上機嫌で煌騎にキッチンへ早く向かうよう催促するのだった。
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