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朔夜の言葉に虎汰は苦虫を噛み潰したように顔を顰め、腹立たしそうにそっぽを向いた。
「本当に厄介なのが動き出したな……」
「あぁ、しかも今朝の様子から今後は愛音も関わってくるかもしれない」
流星が辟易とした感じでぼそりと漏らし、和之も渋い顔をしてこちらをチラリと見ながら言う。
俺もそれは危惧していただけに思わず眉間に皺を寄せた。
蛇黒の常磐もそうだがあの女は俺に異常なまでに執着していて、少しでも俺に近づく女は誰であろうと人を使って始末させる。
利害が一致しているなら今ごろは奴と手を組んでいてもおかしくはない。
問題は蛇黒No.2の吉良がどう動くかだ。
奴とは密かに協定を結び、学園内では常磐の暴走を制御する代わりに、互いを干渉し合わないという取り決めを交わしていた。
だがその約束がどこまで果たされるかはわからない。
俺は虎汰と流星の間に静かに座る虎子に視線を向けた。
「チィの護衛は虎子に任せる。俺が傍にいてやれない時は決してチィから目を離すな。サポート役は流星と虎汰、頼んだぞ」
「―――えっ!? ちょっ、待ってよ!今回は私、最大のミスを犯したのよっ!? それに忘れてるかもしれないけど私は部外者だってばッ!!」
突然の任命に虎子は戸惑いを見せる。
まぁ驚く気持ちはわからないでもないが、撤回する気もないので弁明の余地は与えない。
冷酷なまでに俺は言い放つ。
「その件なら白夜の総長とはもう話がついている。今日付けでお前を白鷲幹部に引き抜いた」
「………そん…な……っ!?」
虎子は今度こそ言葉をなくして絶句する。
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