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『虎子がゲスト扱いだと使い難いだろ?傘下に入っていないチームとの提携は難しいからな』
俺が訝しむように黙していると、奨さんは何でもないようにサラリと言う。
現役を引退したといってもやはりトップを張っていただけはある。
まるでそれを目撃していたかのように今日一日、俺が痛感した障害を見抜いていた。
「………だが何故あんたはそれほどまでに“拾い物”を気に掛ける?理由はなんだ?」
『フッ、俺が気に掛けているのはそっちじゃない。先日ある人物の目撃情報を入手したからだ』
「ある人物……?」
俺の問いに奨さんは勿体つけているのか、電話口でクスクス笑うだけでなかなか答えようとはしない。
痺れを切らせて短く舌打ちをすれば、彼は呆れたように息を吐いて静かに話し出す。
『10年前のあの惨劇の後、何も言わずに忽然と姿を消した男だよ。お前もよく知ってるだろ』
「―――ッ!? まさかそれって……」
『あぁ、目撃情報は多数あるからほぼ間違いないだろう。あの人はこの街に戻ってきている』
とても信じられない情報に俺は息を呑む。
奨さんはあの夜から姿を消したままだった俺の父親が戻っているというのだッ!!
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