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この人のところに集まる情報ならまず間違いはないだろう。
だがどう考えても眉唾物の情報に俺は動揺が隠せなかった。
軽い目眩を起こしそうになってふらりと真横にある給水塔に寄り掛かる。
すると少し離れたところでチィが心配そうにこちらを見ているのが視界の隅に映った。
何も知らないなりにあいつは俺の僅かな変化を敏感に感じ取り、少しでも力になりたいと思っているのかそわそわしている。
余計な心配を掛けないよう笑顔を返さなくてはと思うのに、情けないが今の俺は引き攣った笑みしか返してやれない。
それを見たチィは堪らず駆け寄って来ようとしたが、手をやんわり前に出して制しこちらに来るなと首を横に振った。
『大丈夫か、煌騎。すまん、やはりお前には話すべきじゃなかったか……』
「なんの心配をしているのか知らないが気遣いは無用だ。それよりその情報はいつ入手した?何故今まで俺に黙っていたんだ」
予想外にショックを受ける俺に奨さんが心配した様子で声を掛けてくるが、その言葉を撥ね付けて逆に詰問する。
もう相手を気遣う余裕はなかった。
俺の父親が戻ってきているというならどうして連絡のひとつも寄越さないのか、これまで何をしていたのか聞きたい事は山程ある。
けれどそれらはどれも奨さんに聞いたところでなんの意味も成さなかった。
『俺が知ったのは昨日の深夜過ぎだ。どのみち今日お前には連絡する気でいた。らしくないぞ、ちょっとは落ち着けって……』
そう往なされてやっと我に返る。
俺は申し訳程度の小さな声で“すまない”と謝罪を口にした。
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