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. 俺はただただ愕然とする。 おそらく奴らは“愛音”の顔を知らなかったのだろう。 だから手当たり次第に子どもたちを狙った。 幸い虎汰と虎子は顔が瓜二つだった為に双子だと見分けがつき、深追いされる事はなかった。 ―――だが……、 「……父さんの目撃情報が入り出したのはいつからだ?」 『ん?あぁ、ひと月前からだがあの人だと断定できたのはお前らが暴走した日の夜だ。中野の森林から出てくるのを大勢のギャラリーが目撃している』 「なるほど、やっぱりか……」 それを聞いてある読みが確信に変わる。 あの日、監禁されていたチィを屋敷から逃がしたのは俺の父親だ。 何かがおかしいと薄々思ってはいた。 鎖は切れていたが足枷はそのままだったチィ……。 10年もの間、殺しもせず地下の一室で獣のように飼い殺しにされていたハズなのに、どうやって華奢なあいつが単独で厳重な屋敷から抜け出せたのかが謎だった。 だが尋ねてもチィは覚えていないという。 眠りから目覚めた時には既に鎖が切れていて、地下室の扉も開放されていたと……。 詳細を奨さんにも伝えると俺と同じ見解を導き出す。 『だったらあの人はお前に彼女を託したんじゃないのか?今お前の手元にいる子が跡目の娘かどうかはこの際置いといてさ……』 「そうだな、俺もそう思う。父さんは今じゃ汚名を着せられてこの街では身動きが取れないだろうし……」 そう返しながら俺は擽ったい気持ちになる。 父親が知らぬ間にこの街へ戻っていたと知った時は、何故息子である俺に連絡を寄越さないのかと憤りを感じたが、事情を呑み込めば納得もできる。 それにもしかしたら大事なものを預かったのかもしれないと思うと、なんとも言い表せない不思議な感情も沸き立った。 .
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