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「名前を言っちゃダメだよチィ!! アレは悪のモンスターなんだよッ!? 襲ってくるんだからねッ!?」
健吾さんは大きな身体を小さくしながら懸命に私の背後に隠れようとする。
なんだかちっちゃい子がお母さんの陰に隠れてるみたいだ。
そう思うと途端に私の中に眠る母性本能がぽわぽわ目覚め始める。
意味のわからない使命感に燃えた目でキラキラ輝かせながら彼を励ます。
「大丈夫だよ、健吾さん!私がヤッつけてあげるから♪」
幸い私は長い間地下室に閉じ込められていたからか虫関係は全然平気だ。
手近にあったこん棒(麺棒カナ?)を手に取り、勇ましくアレに近づこうとする。
でも脅える健吾さんはダメダメダメと繰り返すばかりで、私を抱き締める腕を一向に離してくれない。
「健吾さん離して?これじゃヤッつけられないよ……」
「ダメ~!! チィだって敵いっこないよぉ!あいつら恐竜がいた時代から生きてるんだよッ!?」
「も~!意味わかんないよ~ッ!! ホラ、逃げられちゃう~っ!!」
どんなに宥めてみても離れない健吾さんに痺れを切らしながら、私はアレの姿を目だけで探す。
だけど黒い物体は気がつけば私たちの足元の方まで侵略していた。
もちろん驚いたのは健吾さん。
ビックリするような奇声を挙げ、周りにある料理器具を手当たり次第に投げ始めた。
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