1036人が本棚に入れています
本棚に追加
.
『……ちゃん、……ちゃん、起きて?……こんなトコで寝ちゃダメだよ!』
う…ん、誰かが私を呼んでる……。
でも起きなきゃと思うのに身体が重くて言うことを聞いてくれない。
前日までママが私の背中に何かチクチクしてたから燃えるように熱いのだ。
もぞもぞと寝返りをうって薄目を開け、手の甲で瞼をごしごししながら声がした方に顔を向ける。
するとそこには私よりもひとつ年上の男の子が立っていた。
『お兄ちゃん…だーれ?』
『おれはコウ!皆はこうちゃんって呼んでるよ!! それよりお外で寝ちゃダメだろ?父さんたちが探してるから中に戻ろう?』
こうちゃんという男の子はそう言うと私の手を取り、軽く引き寄せて立たせようとする。
けれどまだ中に戻りたくなかった私は首をプルプル横に振ってそれを拒んだ。
『やだ。中つまんないもん!こうちゃんお外で遊ぼ?さっき真っ白な仔猫を見つけたの♪』
『……仔猫?どんなの?』
興味を惹かれたこうちゃんはパァッと瞳を輝かせる。
反応が返ってきて嬉しくなった私は上半身を起き上がらせると、小さい手のひらに仔猫を乗せるイメージで大きさを彼に示してあげた。
『小っちゃいね!お母さん猫はどこに行っちゃったのかな。傍にいなかった?』
『うん、仔猫だけだったよ?』
キョロキョロと辺りを窺うこうちゃんに私はコクンと頷く。
そしてゆっくり立ち上がると彼は私の衣服についた芝生の草や埃を払ってくれながら考え込み始めた。
『もしかしたら迷子なのかな…、だったら探してあげないと!仔猫は親猫がいないと直ぐに死んじゃうんだよ?』
『え、さっきの猫ちゃん、死んじゃうの?』
ショックなことを聞いて涙が目頭に溜まる私……。
こうちゃんはそれを見るなり慌てて私の頭をイイ子イイ子して慰めてくれた。
.
最初のコメントを投稿しよう!