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『大丈夫だよ、探せばきっと見つかるから!』
こうちゃんは頼もしくそう言う。
けれど不安が拭えない私は涙目で彼の顔を仰ぎ見た。
『でも、でも、もし見つからなかったら?』
『その時はおれたちが面倒を見てやろうよ!寂しい思いさせないように、いっぱい可愛がってあげるんだ♪ね?』
『―――うんッ!!』
同意を求めるように顔を覗き込まれて私は涙を拭って勢い良く頷く。
それからこうちゃんと仲良く手を繋ぎ、二人で大きな庭の探索を開始した。
けれど仔猫のいた場所がうろ覚えだった所為でやっぱりというか、今度は私たちが迷子になってしまう。
陽が沈み、辺りがオレンジ色に染まる頃には再び私は涙目になり、こうちゃんに引き摺られる形で歩みを進める羽目になる。
もうここが庭なのか外に出てしまったのかさえわからない。
だけどこうちゃんは自分も寂しくて怖い筈なのに、一生懸命私のことを慰めてくれる。
『もう少しで帰れるから大丈夫だよ!』
『うん、…でもこうちゃん、怖いよ……』
『何があってもおれが守ってあげるから、もうちょっと頑張ろう?』
『うん、わかったよ、こうちゃん』
【フフ、あなたはずっとそうやって人に迷惑を掛け続けて生きていくの?】
『―――えッ!?、』
突然頭の中に声が木霊する。
それは鈴の音のように澄み渡っていてとてもキレイな女の子の声だった。
【私のすべてを奪っておきながら、こうちゃんまで手に入れるだなんて許せない……】
『ちょっ、待って… あなたは誰?私がすべてを奪ったって、どういう意味?』
【私はあなたの影…、でもあなたが彼を奪うというのなら私もすべてを奪い返すまで……】
『―――え、』
【ねぇ、取り替えっ子しましょ……?】
「今からあなたが私の影、それは死ぬまで変わらない……。クスクス、可哀想♪」
目を覚ますともう一人の私が私の首を絞めていた。
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