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《和之side》
「―――いやああああぁッ!? 助けてぇッ!!」
それはあまりに突然のことだった。
食事の合間に眠ってしまったチィを長椅子に横たわらせてあげていたら、何故か悲鳴を挙げて彼女が暴れ出してしまったのだ。
動転した俺は条件反射でチィの腕を引き寄せ、後ろから抱き締めて小さな身体を羽交い締めにする。
狭い場所で暴れては怪我をし兼ねないと思ったからだ。
けれど取り乱したチィの力はハンパなくて、腕の力を少しでも緩めれば逃げられそうな勢いだった。
「ちょっ、落ち着けって、チィ!! ここで暴れたら怪我するから…頼む、落ち着いてくれッ!!」
「チィ、ここは大丈夫だよ!安全だからッ!!」
「あんたは私たちが守ってあげる!だから落ち着いてッ!! 」
虎汰や虎子も必死に呼び掛けてみるが、彼女の目には俺たちの姿など写っていないのか虚ろだった。
ただ泣き叫びながらひたすらに助けを求めている。
こんな時に煌騎がいれば良かったのだが、あいつは愛音との約束を律儀に守って数分前に店を後にしたばかりだ。
「クソ!健吾さんもさっき急患だとか言って呼び出されちまったし、どうすりゃいいんだよ!!」
苛立ちも露に流星が叫ぶ。
すると俺の腕の中で怯えていたチィの身体がビクンと跳ね、更に取り乱し渾身の力で暴れ出してしまった。
「バカ流星ッ!! なに余計に怯えさしちまってんだよ!!」
咄嗟に虎汰が注意するが、それすらもチィは怯えてもう手がつけられない。
騒ぎを聞きつけて厨房から出てきた双子の親父さん、虎治さんが優子さんに直ぐさま煌騎に連絡を入れるよう指示した。
が、それを目で追っている間に隙ができチィに逃げられてしまう。
アッと思う間もなく彼女は誰もいない席のテーブル下に潜り込んでしまった。
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