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遠くの方でバタンッという音が響いた。
瞬時に私は身を縮こまらせ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいと繰り返す。
あれはいつも不機嫌な父親が地下室に降りてくる時の音に似ていた。
……いや、違うのかもしれない。
地下室の扉はもっと重圧な感じだったような気がするし、鈴の音なども鳴らなかった……。
わからない、
私は今ドコにいるのだろう。
さっきまではとても幸せな夢を見ていたと思っていたのに……。
どうしても最後の方が思い出せない。
ただ何故だかここから早く逃げ出さなきゃと思ったのだ。
だけどそんな事はどうでもいい。
もっともっと謝らないと父親はまた私を殴る。
いっぱいいっぱい謝らなきゃ許して貰えない。
怖い、
怖い、
怖いよッ!!
………誰か助けてっ!?
心の底からそう願うけれど、私なんかを助けてくれる人はもういない。
ずっとずっと昔に一度だけ助けに来てくれた人がいたけど、父親に見つかって真っ黒な水鉄砲で殺されちゃった。
そういえば、あの人も面影がこうちゃんに似ていたっけ……。
大人に成長したらこうちゃんもこんな風になるのかなって何となく思ってた。
でも死んじゃった、
一瞬で……。
だからどんなに望んでも助けは来ない。
この10年という月日の間で私は嫌というほどそれを思い知った。
今日はどれだけ殴られるのだろう?
どれだけ罵られるのかな……。
怖い、
怖い、
怖いよ………。
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