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「フフ、チィ顔が真っ赤よ?」
「あらあら、可愛らしい♪もしかしたら男の子とキスするの初めてだったのかしら?」
虎子ちゃんと優子さんはそんな私を見て楽しそうに笑う。
するとそれに反応した虎汰と流星くんが思い出したように騒ぎ出した。
「えッ!? チィ、ファーストキスだったのッ!?」
「……認めねぇ!あんなのキスだなんて俺はゼッテー認めねーぞ!! つか、煌騎ぃ~!貴様どさくさに紛れてチィに何てコトすんだッ!! 見損なったぞぉッ!! 」
「そうだよ!幾ら処置の為とはいえチィの意思を無視して可哀想だぁッ!!」
いつも以上に必死な形相で抗議する二人に、私は照れていた事も忘れて呆然とする。
けれど煌騎はそれには動じず、まるで二人の言葉など聞いていないかのように完全に無視し、私を横抱きに担ぎ上げると近場のソファへ移動した。
そして慎重に下ろすと自分は床に膝をつき、またしても顔がくっつきそうになるくらいに近づけ覗き込んでくる。
「………チィ、もう息苦しくはないか?」
「う、うん……あの、でも……」
あまりの近さにまた顔が火を噴く。
しかし私がどんなに照れても煌騎はやっぱり普通で、寧ろ心配そうに顔色を窺っていた。
それに気づいた途端、何だか物悲しい気持ちになる。
彼にとって私と唇を重ねる事は治療以外の何でもなかったのだと知ってしまったからだ。
さっきの発作よりも胸がぎゅっとなって苦しくなる。
暗い表情をすればまた煌騎に心配を掛けるとわかっているので、決して面には出さなかったけれどそれがとても哀しかった。
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