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「なんだ、頭がキレる天下の煌騎さまといえど女の子の扱いはまだまだ未熟だなぁ……」
ふと店の奥から虎治さんがモップを片手に戻ってきながら呟いた。
見ると彼の手にはモップ以外にも掃除道具を持っていて、優子さんも机の上を片付けている姿が目に入った。
ハッとしてもう一度よく店内を見回してみれば、床やテーブルの上は自分が引き起こした騒動の所為でぐちゃぐちゃだった。
幸い閉店間際だったので他に客もおらず、被害は最小限で済んだが酷い有り様だ。
途端に申し訳ない気持ちでいっぱいになった私は、煌騎の腕の中からすり抜け起き上がって手伝おうとするが、彼に止められて果たせない。
しかも虎治さんも優子さんも笑顔で“発作を起こしたばかりの子に手伝いなんかさせられない”と言って断られてしまった。
代わりに私と煌騎以外のその場にいる全員が片付けを手伝わされ、それを所在なく見守ることしかできず心苦しい思いをする。
見兼ねた優子さんが私にテーブルを拭く布巾をこっそり手渡してくれたけど、瞬く間にそれは煌騎に取り上げられてしまった。
「そんなにチィが心配ならもう連れて帰ればいいだろう……。つか、デカイ図体したテメーが突っ立ってる方が邪魔だ!」
虎治さんは呆れた口調で彼を叱りつける。
まさか自分が怒られるとは思っていなかったのか煌騎は一瞬目を見開いたが、直ぐに頭を捻ると澄ました顔で彼の提案に同意した。
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