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機嫌良く私を片手で抱き上げると煌騎は皆に先に帰るとだけ告げて店を出た。
その際に何故か虎子ちゃんや優子さんに頑張れ♪と応援される。
何のことか意味がわからなかった私は、とりあえず曖昧に笑みを返してその場を取り繕った。
そして車に乗り込んだところで頑張る相手だろう本人に直接尋ねてしまう。
「ねぇ、煌騎?さっきの虎子ちゃんたちのことだけど……あれ、具体的には私なにを頑張ればいいのかな?」
「ん?……さぁな、チィはチィらしくしていればいい。あいつらの言うことは気にするな」
さすがに煌騎もそれにはリアクションに困り、苦笑いを零したが私の頭をクシャクシャと優しく撫でるだけに留めた。
何だか釈然としなかったが彼がそう言うならと、私も素直に頭の中から先ほどの言葉を削除する。
それから車は静かに私たち二人を乗せて走り出した。
車内には私たち以外に年配の専属運転手さんが一人いるだけ……。
しかし後部座席とはある程度の距離があるので会話はもちろんない。
私も自然と口数が少なくなっていく。
静かになると何故だか先ほどの“キス”が思い返されて、彼の顔が見れなくなってきたからだ。
すると煌騎は私が意識してるのを知ってか知らずかこちらを覗き込んでくる。
「どうしたチィ、随分と大人しいな。眠いのなら俺に凭れ掛かってもいいぞ?」
「ううん、大丈夫!着くまでは起きてるよッ!!」
彼にしてみれば気を利かせたつもりなのだろうけど、煌騎に意識しまくりの私は慌てふためくばかり……。
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