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(何だろう、このドキドキ……)
初めて経験する胸の動悸に私は戸惑いが隠せなかった。
煌騎の隣にいると思うだけで胸が破裂しそうになるほど激しく鳴る。
けれどその原因は自分でもわかっていた。
だってどうしてもあの時の感触や記憶が頭から離れてくれない……。
さっきまでは何ともなかったのに、二人きりになってしまうと意識せずにはいられなかった。
私はなんて鈍いんだろう。
(やっぱり煌騎のことが好き…なのかな……)
確信めいた自問自答を繰り返す。
あれは単なる応急処置で、仕方のない事だったのだと何度己に言い聞かせてみても、溢れ出してしまった想いは止められない。
私が変に意識したらきっと煌騎も困る。
なのに胸の高鳴りは鎮まることはなく、寧ろ彼が私に気遣えば気遣うほどに高鳴った。
「……そうか。だが今日1日で色んな事が身の回りに起きたからな……、帰ったら直ぐに休ませてやる」
「……え、あっ………」
そう言うと煌騎は私の肩を抱くと自分の胸元にそっと引き寄せた。
優しく労るように……。
そしてそれに合わせて私の胸はキューッと鷲掴みされたように苦しくなる。
嬉しいのに何故だか無性に泣きたくなった。
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