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既に2度の発作で体力の限界にきていた私は、酸欠も加わり徐々に意識が遠退きそうになる。
けれどその時、ふと煌騎が顔を上げて背後を振り返った。
と同時に彼の背後にあるドアが勢いよく開き、誰かが車内に乗り込んでくる。
「―――そこまでだ、煌騎ッ!! ちょっとおイタが過ぎるぞ!!」
突然の乱入者は彼の肩を掴むと私から引き剥がし、そのまま有無を言わさず車外に引き摺り出した。
そしてバタンと扉を後ろ手に閉める。
死角となって姿は確認できなかったが、その声音は私のよく知る人物のものだった。
目で彼らを追うと外は停止しており、いつの間にか目的地に着いていた事を知る。
そして間を置かずに直ぐさま連れ出された煌騎を追って、運転手さんも外へと飛び出していった。
おそらく二人の間に入る為だろう。
その一連の出来事を私は薄れゆく意識の中、ただ静かに傍観していた。
外では煌騎が凄い剣幕で怒られているのが微かに聞こえてくる。
でも何を言われているのかまでは聞き取れない。
(私の所為で煌騎が怒られてる…、助けなくちゃ……)
そう思うのに身体は言うことを聞いてくれなかった。
私が意識を手放す瞬間、
あの人が煌騎の左頬を殴る姿が視界の隅に映ったけど……、
もう、どうすることもできない。
後は暗闇が瞼の裏に延々と広がるだけ―――…
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