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《煌騎side》
店を後にした俺たちはまず専属の運転手が待機する車へと向かった。
虎治さんの店先にも駐車場があるのだが、車があまりに大きいのでいつも少し先にある公園で待つよう指示してある。
遠くから俺たちの姿を確認した少し年配の運転手、篠山は運転席から慌ただしく降りると直ぐさまこちら側に駆けつけ、恭しく後部座席のドアを開けた。
乗り込むついでに俺は先ほどの事情を手短に説明し、代わりの車の手配もそいつに頼む。
すると篠山は年下の俺に丁寧に頭を下げてドアを閉め、運転席に戻るまでに連絡を済ませてから車を静かに発進させた。
横を見るとチィが気の所為か少し元気がない。
車に乗り込んで直ぐは饒舌に話していたのに、車内では他に話す者がいない為か口数が徐々に減っていき、遂には何も話さなくなってしまったのだ。
俺は疲れているなら自分に凭れ掛かっていろと提案してみるが、チィは遠慮しているのか断られてしまう。
仕方がないので半ば無理やりチィの肩を抱いて引き寄せ、胸の中で休ませる。
ここ数日でチィが俺の心音を子守唄代わりにしているのを知っていたからだ。
しかしその肩は何故かビクンと跳ねて強張り、少しばかりの抵抗を示す。
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