忍び寄る影

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. だけどそんなことよりも私は直ぐに虎子ちゃんの方へと目線を戻す。 「―――いた!絶対に可愛いって言いそうな人!!」 「……え、なになにっ!? どしたの!? 」 スゴい剣幕で彼女を見た為、虎子ちゃんは何か不穏な空気を感じたのか1歩2歩と後ろへ後退する。 でも私は構わず煌騎を振り返った。 「煌騎、虎子ちゃんはっ!? 虎子ちゃん可愛いよね!ぷちゅってする?」 絶対的な自信があるだけに意気揚々と尋ねる。 が、しかし彼の顔は瞬時に凍りつき無表情となった。 あ、もしかして何かマズイ事聞いた!?と後悔した時には既に遅く、煌騎は私を床に下ろすと虎子ちゃんのいる方へと歩いていく。 そして隣に並ぶと何の感情も示さない表情のまま、こちらを睨むように振り返った。 「…………いいんだな、しても……?」 「―――え、」 静かな怒りを湛えた声音でそう尋ねられ、私は言葉を失う。 直ぐに心の中に浮かんだのは純粋に、自分以外の人にはして欲しくないという感情だった。 虎子ちゃんは大切なお友だちだけど、彼と並んだ姿を見た途端ソワソワして胸がモヤモヤとする。 けれど煌騎から滲み出る不機嫌なオーラは私を萎縮させて口を塞いだ。 .
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