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下唇をぎゅっと噛み、俯いてしまうとキッチンから出てきた和之さんが私の隣に並ぶ。
「……どうした、チィ。何があった?」
私と煌騎を交互に見た後、そう優しく尋ねてくれる。
でも萎縮した私の口はまだ硬直していて上手くは喋れない。
プルプル首を振って彼のブラウスの袖を軽く握る。
それを見た和之さんは困ったように息を吐くと私の頭をクシャクシャと撫で、それから対峙する煌騎の方に視線を向けた。
「理由はわかんないけど許してやれよ。こんなに落ち込んじゃって、チィが可哀想じゃないか……」
「和之、放っとけ。どうせ煌騎の方が悪いんだから墓穴掘るのがオチだよ♪」
不意に後ろから声が聞こえて振り返ると、そこには何故かここにはいる筈のない健吾さんがいた。
しかも和之さんの席で皆と一緒にのんびり朝食を採っている。
どうして彼が朝からここにいるのか不思議だったが、健吾さんは気にした風もなく言葉を続けた。
「バカが体裁を取る為に吐いた嘘が思わぬ方向から返ってきて、引くに引けなくなってんだろ……」
何もかもを察しているのか、そう言ってしたり顔で煌騎を見る。
そしてニターッと悪魔な笑みを浮かべると私の方に顔を向けた。
「なぁ、チィ?可愛いのは何も虎子だけじゃないぞ~?ホラ、双子の虎汰だって同じ顔なんだからか~わいいぞぉ~♪」
「―――あっ☆」
「………………………チッ」
健吾さんの助言で私は忽ち形勢逆転となり、煌騎よりも有利な立場となった。
彼は苦虫を噛み潰したような顔になる。
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