忍び寄る影

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. おそらくいつまでも気にするだろう事を予測し、彼女はわざとオーバーに言ったのだろうが、疑う事を知らないバカな私はまんまとそれを鵜呑みにする。 その時、朔夜さんがこっそりこちらを見て口角を上げていたらしいのだけれど、残念ながらそれは見逃してしまった。 「それよりも体調は大丈夫?昨日は結局、倉庫に着く前に倒れちゃったんでしょ?」 そう言って虎子ちゃんが心配そうに私の顔を覗き込む。 頭を撫でていた手をそのまま頬に移動させて労るように両手で包まれた。 でも何故か隣の煌騎が途端に咽せたように咳をしたので皆が首を傾げて彼を見る。 一身に注目を浴びた彼は、けれど平静を装って直ぐに“何でもない”と言ってまた窓の外を向く。 「変な奴だな……。でもチィ、本当に無理だけはするなよ?健吾さんも今日くらいは休めって言ってたんだから……」 不審な煌騎を訝しみながらも和之さんが尚も私を気遣ってくれた。 出掛けに健吾さんが登校する私を引き止めたのを気にしているらしい。 「アハハ、大丈夫だよ♪1日寝たらもう元気元気☆」 眠ってる間に点滴もしてくれてたし、本当に無理はしていない。 だから皆に心配を掛けまいとガッツポーズをして、体力全快なのをアピールしてみた。 それを見て和之さんも虎子ちゃんも苦笑いを浮かべたけど、私の熱意に負けて説得するのは諦めたようだ。 最後に頭をポンポンと撫でると、虎子ちゃんが釘を指すように顔を覗き込んでくる。 「まぁ、今日は1日煌騎くんが目を光らせてるだろうから、異変には直ぐに気づくと思うけど…体調が悪くなったら言うのよ?」 「うん!わかった♪」 私は満面の笑顔でそれに答えた。 .
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