忍び寄る影

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. 「わぁ~!スゴ~いッ!! 遠くまで見えるぅ♪」 煌騎に抱っこされたまま最上階に登ると、直ぐに下ろして貰ってそこから見えるパノラマの景色を私はぐるぐると見て回った。 けれど小さな面積しかない特等席を見て回るのに、そう大して時間は掛からない。 トコトコと煌騎の元へ戻ってくるまでの僅かな間に、そこには簡素だけど素敵なピクニックセットが設置してあった。 ピンクの花柄が描かれた可愛いレジャーシートを床に敷き詰め、ふかふかのクッションが何個か置かれている。 そしてその中央には、大きくてカラフルなパラソルが机代わりの長椅子に固定されていて、直射日光を遮ってくれていた。 これなら長時間ここにいても快適に過ごせそうだ。 先にパラソルの下に腰を下ろして寛いでいた虎子ちゃんが、私に向かっておいでおいでをする。 嬉しくなってしっぽを振る勢いで彼女の元へ駆け寄った。 「虎子ちゃん、コレどうしたのっ!? 」 「ふふん、もちろん用意したのよ♪チィが今日からここに通うって聞いたから☆」 「―――え、もしかして私の為っ!?」 聞けば全部これは虎子ちゃんの私物だという。 前日に店で和之さんから事情を聞いていた彼女は、少しでも早く私がこの学校に慣れるようにとこれらを用意してくれたらしい。 他にも和之さんはお昼用のランチ、朔夜さんは暇潰しにとミニオセロやゲームを持参。 虎汰は昨日も見せてくれた山のようにある御菓子を長椅子に広げてくれた。 残念ながら流星くんは用意するものが思い浮かばなかったので、虎子ちゃんのを運ぶお手伝いをしたとのこと。 皆の優しい気遣いに私は胸がいっぱいになった。 .
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