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「よかったな、チィ……」
そう言って煌騎がゆっくりと隣に座る。
そして“俺からはコレだ”と小さな何かを私に手渡してくれた。
まさか煌騎からもサプライズを用意して貰えてるとは思わなかったので、びっくりしてキョトンと彼を見上げる。
すると握り締めたままの手の甲をちょんちょんと長くてキレイな指で突つかれた。
あ、と条件反射で手のひらを開けば、そこには小さな銀色の鍵が光っている。
おそらくは何処かの部屋の鍵だろうそれに、可愛いハート形にカットされた無色透明なストーンと、同じくハート形の透き通った赤いストーンが二つ連なったキーホルダーが一緒にぶら下がっていた。
石はどちらも親指の爪くらいの大きさがあるだろうか……。
よく見ると赤い方には細かい細工が施してあり、表面に薔薇の絵が精密に彫られていた。
「キーホルダーは昨日、露店で見つけて買った。お前に似合うと思って……」
「………スゴく、キレイ……」
私は一瞬にしてその石に引き込まれてしまっていた。
何だか懐かしい感じがする。
以前にも同じようなものを持っていたような、そんな不思議な気持ちに陥った。
「それから鍵は寝室の鍵だ。あそこは今からお前専用の部屋だから好きに使うといい」
「―――えっ!?」
呆然とキーホルダーを見つめていた私は思わず顔を上げて彼を凝視する。
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