忍び寄る影

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. だって、あの部屋は煌騎の部屋だって聞いていたから……。 元々あの倉庫には幹部部屋なるものが各自一部屋ずつ1階に存在する。 でも総長である彼の部屋だけは下に置かず、わざわざ2階の一番奥まったところにあった。 それは一人重責を抱えるトップにせめて寛げる空間をと考え設計されたもので、歴代の総長も引退するまで皆あの部屋を使っていたらしい。 だから本来なら他の者は何人も入る事は許されないのだ。 そんな部屋に寝泊まりさせて貰っているだけでも申し訳ないと思うのに、煌騎はそれを私に譲るという。 「ダメだよ、そんなのっ!? こんなの貰えない!だってあの部屋は……っ!?」 慌ててその鍵を突き返すと煌騎は静かに首を横に振った。 そして無言のまま突き返した拳を私の胸に押し返す。 何故そうするのかわからなくて揺れる瞳を彼に向けた。 「鍵はお前が持ってろ」 「………どう…して……?」 「さぁ、チィも自分の部屋が欲しいだろうと思ったからだが……他にも理由が必要か?」 「……イ…ヤッ!! ……こんなのいらないっ!!」 感情のままに私は再度手を突き出していた。 嬉しいはずの言葉がどうしても素直に受け入れられない。 なんだかもう私なんかいらないと言われているようで、急に怖くなったのだ……。 がむしゃらに首を横に振って、愚図る幼子のようにいらないいらないと繰り返す。 私は煌騎の事となるといとも簡単に取り乱してしまう。 我ながら自分が情けないと思った。 「…………チィ、言い方が悪かった。お前が望めば俺は何処へも行かない。ずっと傍にいる。だからもう怯えるな」 「―――っ!?」 煌騎は困ったようにそう言うと、パニックになった私をぎゅっと抱き締めてくれた。 突然の抱擁に短く息を呑む。 .
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