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先ほどから私の頭の中で激しく警戒音が鳴り響く。
怖い、怖い、怖い―――…
育ての父に似た亜也斗が死ぬほど怖い。
虎子ちゃんの腕の中でブルブル震えていると、彼女が透かさず私を強く抱き締め背中を擦ってくれた。
「私たちがついてるから大丈夫だよっ」
「……う…うん、ありがと」
その言葉に救われホッと息を吐き掛けた時、また亜也斗が何事かを言った。
今度は私に向けて……。
「おチビちゃん、そこにいるンだろ?こっちに出ておいでよ♪」
「―――っ!? 」
瞬間、身体がビクンと飛び跳ねた。
あまりの恐怖に涙が頬を伝う。
私は『彼』の言葉には逆らえない。
だって従わないとたくさんたくさん叩かれるのをこの身体が嫌というほど知っているから……。
無意識の内に震える脚で立ち上がろうとすれば直ぐさま虎子ちゃんに止められた。
「行かなくていい。大丈夫だから……」
「………でもっ………」
助けを求めるように見上げると彼女は力強く頷いてくれる。
けれど隠しきれない緊張感が伝わってきて不安は消えてくれない。
泣きながら首を振れば和之さんが私の傍らに片膝をついてしゃがんだ。
「絶対に俺たちが守ってみせる。だからチィ、安心して?」
そう言うと彼はふんわり笑う。
前を向けば流星くんも虎汰も、そしてあの朔夜さんまでもが一瞬だけど振り返って私に笑顔を見せてくれた。
皆のその柔らかい笑みに心の奥底で眠っていた勇気が膨らむ。
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