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だけどせっかく膨らんだその勇気も次の亜也斗の言葉で、ペシャンと音を立ててものの見事に潰れる。
「無駄だよ、おチビちゃん。キミは所詮飼われてたペット、飼い主がいなきゃ生きられないんだから……」
「―――フザけんなッ!! チィはペットでも何でもねぇよっ!!」
「それ以上勝手なこと言うとマジでブッ殺すぞ!亜也斗ッ!!」
直ぐさま虎汰と流星くんが反論してくれたけど、私の耳にはもう二人の声は届いていなかった。
亜也斗の言葉だけが頭の中で木霊する。
(私はペット、だったの……?確かに自分一人ではこの広い世界を生きられない。でもっ―――…)
「………チィ、奴の言葉に惑わされるな。お前は自由に生き、選択する権利をちゃんと生まれながらに持ってる」
「………あ………」
それまで無言で見守っていた煌騎が口を開き、そう私に言ってくれた。
その言葉で凍り掛けていた心が徐々に溶けていく。
「その権利だけは決して手放すな。自由になる事を恐れなくていい。いつでも俺が傍にいると約束したろ?」
「………っ!? うん、そだね…煌騎っ」
涙でぐじゃぐじゃの顔を更にくしゃっと崩して笑い、私は堪らす彼の元に駆け出して腰元の辺りに抱きつき顔を埋めた。
煌騎はそんな私を優しく抱き留めてくれる。
気に入らないのはもちろん亜也斗ただ一人だ。
「ハァ、無駄だって言ってるのに……しつこいなぁ。でもま、いいや♪今回は警告しに来ただけだし☆」
「ウッセェ!! 他に用がねぇならとっとと帰りやがれッ!!」
虎汰が間髪入れずに叫ぶ。
けれど亜也斗はやっぱり太々しく鼻で笑って彼をあしらう。
「やれやれ、小物ほどよく吠えるってのはホントだな……。でもおチビちゃん、そこにいていいの?前の飼い主さんがキミを探してるよ♪」
「―――えっ!?」
今度こそ私の息が完全に止まる。
呼吸の仕方を忘れたように口をぱくぱくさせ、建物の下にいる亜也斗を凝視した。
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