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前の飼い主とは間違いなく育ての父の事を指しているのだろう。
―――あの人が私を探してる…。
それがどういう意味を成すのか、幼い頃から知り尽くしている。
大好きな煌騎たちに危害が及ぶということだ。
人の命など何とも思わない父の事だから、きっと残忍な手口で殺されるに違いない。
あの日私を逃がしてくれようとした人と同じように……。
先ほどとは比べ物にならないくらい身体がガクガクと震え出した。
もう呼吸も儘ならない。
「クク、お前らも命が惜しいなら早くおチビちゃんを手放した方がいいんじゃないのか?可愛い見た目に反して疫病神だからな♪」
「―――ふざけっ…あ、…チィっ!?」
怯える私に気を良くした亜也斗が、ニヤニヤと勝ち誇ったように嫌味な笑みを零す。
煌騎はふざけるなと直ぐに反論しようとしたけれど、自力で立つこともできなくなった私がその場に崩れ落ちそうになった為に叶わなかった。
だからか代わりに和之さんが前に出て亜也斗を睨み付ける。
「その『元飼い主』さん?とやらとお前との繋がりが気になるところだが、生憎と俺たちは死闘に慣れてるんでね♪」
そう言うと彼は眼鏡を取り去りながらニヒルに笑った。
そして次の瞬間には真剣な面差しになり、静かにこう宣言した。
「チィは何があっても渡さない。例えこの命が尽きようともな……。お前から奴にそう伝えとけっ」
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