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普段の彼からはとても想像できないほどの気迫に、私は知らず煌騎の腕の中で息を呑む。
でもコレは和之さんのほんの一面にしか過ぎないのたと直ぐに悟る。
だって彼はいつでも私に優しかったから……。
こんな事で嫌いになんかなれない。
それはこの場にいる皆にも言える事だった。
私は暴走族というものを何も知らない。というより外へ飛び出して幾日も経っていないのだから知りようがない。
けれど彼らはボロボロの私を躊躇なく拾い、何も言わず庇護してくれた。
そんな彼らが悪い人の筈がないと、それだけは本能でわかる。
私はこんな時どうすればいいのだろう……。
「―――亜也斗、そこまでだッ!!」
その時、突如出入口の方から声を荒げた男の人が乱入してきた。
その人物は昨日も仲裁に現れた青い髪の青年だった。
彼は肩で息をしながらゆっくりと亜也斗の方へ近づいていく。
表情は鬼のように凄い形相だ。
傍らに近づいたと思うと亜也斗の胸倉を掴んで強引に自分の方へと引き寄せた。
「何度言えばわかる亜也斗!学園内ではあれほど騒ぎを起こすなと言っただろッ!!」
「チッ、またこいつを呼んだのかよ。芸がねぇな、ったく……」
だけど当の彼は両腕を上げて頭の後ろで交差させ、面倒臭そうに顔を顰めて背ける始末……。
まったくもって堪えていないようだ。
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