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「あれ?もしかしてチィ、ご機嫌斜めなの?珍しいね」
今日は午前中学校をサボっていた虎汰が何食わぬ顔で屈み、私の顔を覗き込んでくる。
でもそれには反応を返さず、彼と入れ違いに今度は流星くんが屋上を後にする姿を見送りながら深い溜息を零した。
ここ2~3日の彼らは何だか妙に慌ただしい。
トラブルでも発生したのか煌騎は変わらず傍にいてくれるけど、常に入れ替わり立ち替わりするチームの子たちから報告を受けている。
それに和之さんや流星くん、虎汰にあの出不精の朔夜さんまでが屋上には滅多に姿を見せなくなったのだ。
それは倉庫にいても同じで、前のように5人全員が揃うようなことは極端に減った。
これで気づくなという方がムリだろう……。
確実に煌騎たちの周りで何かが起きている。
もう知らないフリはできそうになかった。
私は上体を起こすとストローをぎゅっと噛みしめ、目の前にいる虎汰に尋ねようかどうしようかと悩む。
でも勘の鋭い彼は私の表情をいち早く読み取るとワザと話を逸らせた。
「ところでチィ、虎子は?姿が全然見えないけど……」
キョロキョロと辺りを伺い自身の双子の片割れを探す。
話を逸らされた事に私は少なからずショックを受けるが、心のどこかでホッとしている自分もいる。
それに気づかれぬよう平常心を保ちながら虎汰の質問に答えた。
「虎子ちゃんならさっき図書館に行くって出ていったよ?」
「―――はっ!? あいつが図書館!? 何でッ!?」
よほど驚いたのかビックリする虎汰に私は苦笑気味に頷く。
確かに虎子ちゃんと図書館って何だか似合わない。
それもそのはず、彼女は暇をもて余した私の為にわざわざ本を借りに行ってくれているのだった。
自分もついていくと強請ってはみたが、屋上の方が煌騎もいるし安全だからと取り合ってはくれなかった。
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