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「ハハ、虎子諦めろ♪誰もチィには敵わないって!」
横で目くじらを立てる虎子ちゃんにまぁまぁと虎汰が呆れた顔で宥める。
そのお陰か彼女の機嫌が何とか直ったので、とりあえず私たちはパラソルの下へと移動した。
「そういえば…、今日は晩飯どうすんだ?和之、今夜は倉庫に帰って来ないんだろ?」
「―――え?」
不意に呟くように尋ねた虎汰に周りの誰よりも先に私が反応する。
今まで皆がどんなに慌ただしく動こうと、チームのツートップである煌騎と彼は表立った行動を控えていたからだ。
彼ら二人が動けば周りから余計な詮索を受け、下手をすればこの機に乗じて善からぬ動きを見せるバカな輩が現れる。
その程度で潰せるほど白鷲は脆くはないが、チーム内に不協和音を生じさせたくはなかった。
なのでトップ二人は何かあっても極力動いてはいけないのだと、つい2日ほど前に私は虎子ちゃんからこっそり教わっていた。
それなのに何故……!?
悪い胸騒ぎを覚え、縋る思いで煌騎の顔を見上げると、彼はそんな私を落ち着かせるように大きな手で頭を撫でた。
「……心配ない、アイツはただ実家に帰るだけだ。俺と同じで久しく帰ってなかったからな、家の者に招集を掛けられたらしい」
「…………実家………?」
確めるように尋ねると彼は穏やかな表情でコクンと頷く。
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