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「チィ、何度も言うけど私から離れすぎないで?」
午後の授業開始を報せる鐘が鳴り終わった頃、トイレに行きたくなった私は虎子ちゃんに付き添われて屋上から一番近い下の階のトイレへと向かっていた。
虎汰のお陰で少し元気を取り戻せていた私は、今練習中のスキップを鼻歌を歌いながらやるが上手くいかない。
どうしても右手右足が同時に出てぎこちなくなるのだ。
夢中になって練習しているとついつい私は虎子ちゃんから離れすぎてしまっていた。
「あうっ、ごめんなさい。でもスキップって難しいね?」
「フフ、やり慣れてないだけよ♪チィも直ぐにできるようになるわ☆」
「うん!頑張るッ!! 」
励ますように言う虎子ちゃんに頷き、また前を向いてスキップを踏もうとした時、前方から最近は見慣れた髪色の男が近づいてくるのが見えた。
途端に私は虎子ちゃんの後ろへと逃げ隠れる。
「性懲りもなく今日も来たの?よっぽどの暇人ね、貴方……」
背後に隠れたのを確認した後、彼女が威嚇丸出しの鋭い眼差しを前に向けた。
その先に常磐 亜也斗が痛くも痒くもないという顔で、こちらをニヤニヤ見ながら立ち塞がる。
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