無知であるがゆえの過ち…

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. ここ何日か彼は煌騎たちの目を盗んでは、毎日のようにこそこそと私の所へやって来るのだ。 もちろんその事は既に皆に伝えてあるし、それでこその今の厳戒体制なのだが……。 亜也斗はまるで私たちの行動を逐一監察しているかのように、小さな隙を突いては現れる。 今日は私がトイレの場所が近くだからと油断して、二人が止めるのも聞かず屋上を飛び出してしまったのを読まれていたようだ。 トイレが我慢できなかったというのもあるけど、こんな事で彼らを煩わせたくないという心理が働いてこんな行動を取ってしまった。 自分の浅はかさを呪い、海の底よりも深く反省するが今さら遅い……。 慌てて虎子ちゃんだけはついてきてくれていたのでそれだけが救いだ。 でも内心は“帰り道で良かった”と呑気にも考える余裕がある。 何故なら……、 「―――亜也斗ッ!! また授業を抜け出したなっ!?今日という今日は許さないぞ!!」 お決まりのように彼のお目付け役の吉良さんが間を置かずにやってくるからだ。 亜也斗の身柄を瞬く間に確保するとこちらを向き、微かに笑んで彼は潔く頭を下げる。 「遅くなってすまない。昼から姿が見えなくなってずっと探していたんだが……」 「いえいえっ!? あの、ついさっき現れたばかりなので……」 あまりに彼がすまなさそうに謝るので、私は手と頭をプルプル振って実害はまだないから大丈夫だと伝えた。 すると前にいる虎子ちゃんが“そんな事わざわざ教えてやらなくてもいいのに…”と呆れた声を漏らす。 和之さんにも彼だけは絶対に信用してはいけないと忠告されていたのだけど、こうも何度も助けられるといい人なのかなとか思ってしまう。 .
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