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「何なんだよ、お前!この間から俺の邪魔ばっかしてッ!!」
首根っこを掴まれた亜也斗がバッと乱暴に吉良さんの手を払う。
けど観念したのかこれ以上は何もしないと軽く両手を上げ、ジェスチャーで示したので彼も無理に拘束しようとはしなかった。
「何とでもほざけ!学園内では絶対に問題は起こさせない!!」
「はんっ、偉そうに!どうせ今回も薫子ちゃんから俺の居場所を聞き出したんだろ?お前は詰めが甘いんだよ!!」
「―――なにっ!?」
呆然と事の成り行きを見守る私たちを余所に、目の前で喧嘩を始めてしまった二人。
しさし主従関係がしっかりした彼らは主が手を出しても、従者が手を出す事は決してない。
肩を拳で殴られたり足の脛や際どい所を狙って蹴られたりしても、吉良さんは防御の一方で反撃は加えなかった。
「………どうでもいいが茶番は他所でしてくれないか」
その時、屋上から下りてくる階段の上部から煌騎の姿が見えた。
ゆっくりと長い脚で階段を踏み締め、階下に降り立つと私と虎子ちゃんの前に立つ。
そして静かに後ろを振り返ると小さな声で“無事か?”と尋ね、私がコクコクと頷けば僅かに口端を上げて亜也斗と吉良さんに向き直り、二人を睨み付けた。
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