無知であるがゆえの過ち…

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. 「……吉良、俺は何度も見過ごす事はできないと言っておいた筈だが?」 地を這うような煌騎の低い声音に、問われた彼以外の者も知らず動きを止めて息を呑む。 彼が全身に纏っているのは正に殺意と呼べるに等しい程のオーラだった。 そういえば私が亜也斗に初めて遭遇した日も、彼の腕をへし折るんじゃないかと思うくらいに捻り上げていたのを思い出す。 このままでは本当に煌騎が殺人犯になったゃうと危惧した私は、虎子ちゃんの背後から抜け出して彼の背中にボフンとしがみ付いた。 「………………チィ?」 「煌騎、顔…怖い。怒っちゃやだ」 突然の行動に戸惑いながら振り返る彼に、私は顔を見上げながらそっと呟くように小さな声で縋る。 自分に対して怒っているのではないとわかってはいるが、負の感情が直に伝わってきてどうしても怯えてしまうのだ。 切実に訴えると煌騎は諦めたかのように深い溜息を吐いて肩を竦めた。 「………わかった。今日の所もとりあえずは見逃してやる」 「―――っ!? すまない!茨さんもありがとう」 ホッと息を吐く吉良さんに、でも煌騎は冷たく“次はないぞ”と言い放つ。 それでも彼は頷くと嫌がる亜也斗を引き摺ってその場を去っていった。 「一体アイツら何がしたかったのかしら……?」 「どうでもいい。そんなことよりチィにはお仕置きが必要みたいだな。何がいい?」 暫しの静寂の後、虎子ちゃんが呆れた声で呟き、でも煌騎がこれ以上ないくらいの優しい笑みを浮かべて私を振り返る。 ヤバいと瞬時に悟り慌てて虎子ちゃんの元に逃げようとするが、そんな隙も与えないほどの瞬殺力で彼に捕らえられてしまった。 .
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