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私を長い間地下室に閉じ込め、虐待し続けていた父の裏の顔は、人身売買を生業とする闇の組織の人間だったのだ。
身寄りのない子どもや家出などで身元が割れない女性を拉致し、海外に高値で売り飛ばしていた。
警察内部でも随分と前からその事を嗅ぎ付け、秘密裏に捜査を続けていたのだが彼の表の顔が妨げとなり、調査が思うように進展しないでいたという。
国家の調査機関でも迂闊に手を出せないほどの人物、といえば政治関係者しかいない。
それもかなりの大物……。
そんな相手に彼らを関わらせてもいいのだろうか?
私なら怖くてきっと逃げ出してしまう。
なのに煌騎たちは自分に詳細を知らせもしないで守ると言ってくれる。
早く、
早く決断しないと……。
彼らに今以上の迷惑を掛ける事になってしまう。
でもこの幸せを手放すにはあまりにここは居心地が良すぎた。
特に煌騎の腕の中は日だまりのように暖かく、涙が出るほどの幸福感を私に与えてくれる。
だからかそこから抜け出すにはかなりの勇気を必要とした。
『……ごめんなさい。後少しだけ…、もう少しだけでいいから傍にいさせて?』
私は誰ともなしにそう心の中で呟いた。
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