無知であるがゆえの過ち…

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. ******** 「ヒマぁ……ヒマだよぉっ!な~、朔夜ぁ!! 何か面白い事ねーのかよぉッ!!」 虎汰がソファの上でゴロゴロと転げ回るのを私は苦笑いを浮かべながら眺める。 学校が終わり倉庫へと戻ってきた私たちを待っていたのは、朔夜ただ一人だった。 いつも通り己の指定席に腰を下ろし、足を忍ばせて何の前触れもなくバンッと室内へ入ってきた虎汰を物ともせず、相変わらずの無表情でスルーした彼……。 今もヒマだと傍若無人に喚き散らし、駄々を捏ねるのを総無視する。 そしてただひたすらにPCのキーボードの上を長くてキレイな指が走り続けていた。 「ちぇっ!和之も流星もいないからつまんねー!! それに…煌騎もどっかいっちまうしよぉ」 ヒマを持て余していた虎汰がぼそりと呟く。 彼の言う通り煌騎は先ほど自身のスマホに電話が掛かり、倉庫を出て行ってしまっていた。 電話の相手は『親父』さん。 理由もわからず消えた親の代わりに煌騎を今日まで育ててくれた人だと聞く。 いわば彼にとっては大事な恩人さんだ……。 そんな人からの急な呼び出しに、でも私の事を気遣って煌騎は出掛けるのを最後まで渋っていた。 なので私の事はいいからと無理やり彼の背を押し、玄関まで笑顔で送り出したのだ。 煌騎にはちゃんと恩人さんを大事にして欲しかったから……。 .
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