無知であるがゆえの過ち…

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. しかし願いも虚しく彼には無言のまま首を横に振られ、がっくりと肩を落とす。 それを横で見ていた虎汰が苦笑いを浮かべ、“仕方ないなぁ”と漏らすと寝転がっていた上半身を起こして徐に口を開いた。 「別にいいじゃんか、夜更かししても。どうせ明日は休みなんだしさ…」 「ダメだ。成長期のチィにそんな事はさせられない」 さりげなく私のフォローしてくれた虎汰に対して、けれど朔夜さんはやっぱり頑として首を縦には振ってくれない。 ピシャリと彼の言葉を撥ねつけると、半ば強制的に私を寝室へ連れていこうと立ち上がってこちらへ近づいてくる。 いつも寝るよう促すのは和之さんだった為、今日くらいは大丈夫かと思ったのに……思わぬ強敵が現れた。 「や、やっ……あうっ」 無駄な努力と知りつつもソファの上で微かに抵抗を試みたが、呆気なく朔夜さんの手によって首根っこを掴まれた私は逃げ場を失ってしまう。 端から見ればその姿はまるで母猫が仔猫を住み処に連れ戻す時の仕草みたいだ。 虎汰はフォローも忘れて他人事のようにケタケタ笑っていたが、朔夜さんの手の中でぷらんとぶら下がった私は不満も露に頬をぷくぅと膨らませた。 おそらく和之さんと仲の良い彼の事だ。留守中の私の世話を事前に頼まれでもしたのだろう。 普段の彼からはとても想像できないような行動力だった。 敵わないと観念した私は抵抗を止めて自ら寝室へ向かおうとした時、リビング内に無機質な機械音が鳴り響く。 その音に3人が同時にピタリと動きを止めた。 .
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