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驚愕する中、瞬時に動いたのは虎汰だ。
立ち上がると目にも止まらぬ速さで部屋を飛び出していく。
「―――待てっ、虎汰!早まるなッ!!って……ちっ、和之すまない。あのバカ先走って出ていった。…あぁ…わかってるっ」
直ぐさま朔夜さんが止めに入るが、虎汰はそれに見向きもしなかった。
その間私は何もできず、ただ呆然とその場で立ち尽くす。
でも頭の中では先ほど朔夜さんが発した言葉が何度も木霊した。
『……流星が刺された…』
それが何を意味するのか、幾ら無知な私でもわかる。
手足がぶるぶると震え、ぺたんと床に座り込んでしまった。
するといつの間にか通話を終えた朔夜さんが傍らに膝を着き、そっと私の肩を抱き寄せてくれる。
「心配するな、今現場に和之が向かってくれている。虎汰も向かったようだし、流星は奴らに任せれば何も問題はない」
「……ホン…ト?流星くん、死なない!? 」
「フッ…、縁起の悪いことを言うな。大丈夫に決まってるだろう?アイツは不死身だからな……」
口端を上げて珍しくフザけたようにそう言うと、朔夜さんは真面目な表情に戻してこくんと頷いた。
それを見て漸く落ち着きを取り戻した私は震えも止まり、ぎゅっと彼にしがみつく。
どうしても拭えない不安を掻き消すように俯き、そのまま次の連絡がくるのを二人で待つことになった。
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